PTいっつんのEBMブログ

理学療法士兼ひよっこEBMerがお届けする文献抄読

聴力低下と認知機能低下について

ご無沙汰しております。

ここ最近は理学療法士と耳鼻科との関連に着目し、日々臨床業務を行っております。

中でもめまい平衡系とは異なることとして、今回は「聴力と認知機能」をテーマに文献を読んでみました。

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

P:BLSAに参加している、認知機能の障害や認知症のない55歳以上の方(n=347)
I :聴力と認知機能
C:コホート研究のためなし(Intervensionに起因した、年齢、聴覚、認知機能別の比較)
O:聴力が低下すると認知機能が低下する。

【方法】
認知機能検査は以下の検査を実施。

・Mini-Mental State Examination:MMSE(n=340)
・Free and Cued Selective Reminding Test:FCSRT(n=343)
・Trail Making Test-A:TMT-A(n=338)
・Trail Making Test-B:TMT-B(n=338)
・Strooping Test(n=314)
・American version of the National Adult Reading Test:AMNART(n=235)

聴覚検査は聴こえやすい方の耳で実施。0.5,1,2,4kHzでの聴覚閾値の平均で聴覚を定義。

【統計】
回帰モデルを使用。交絡因子を調整しながら解析している。

【結果】
聴覚の低下はMMSEの点数や記憶(Free Recall)や遂行機能(Stroop Mixed,TMT-B)の低下に顕著な関連がある。
その結果は潜在的な交絡因子、年齢の非線形効果、重度の難聴のある個人の除外に関する調査に堅牢であった。
25dB以上の難聴に関連した認知機能の低下は6.8歳の年齢差に関連する低下と同じであった。

私見
結果の解釈として、
①Table2を見ると年齢に関わらず、FCRSTにおけるFree Callの結果はStroopingと比較して、有意性は低いが関連性が高いと示唆されている。(なる確率は不明も、難聴になると認知機能の低下に関連している。)
②Table2では10dBごとに分けられたグループでFCSRTのみの比較(他の共変量を除いた場合)は有意な低下が示唆されている。
③Table3では25dB以上の聴力低下は到達する年齢にかかわらず、Stroop MixedやTMT-Aが有意に低下している。

なぜ線形探索なのか、難聴の閾値の値だけでなく、変化量も見たほうが…、元々聴力が低い方はどうなのかなど、疑問がありますが、キリが無いのでこの話はやめます。

 

しかしながら、この研究で出ている結果は、実臨床で起こりえるものとして候補に上げておく、という距離感を持っても良いのではないかと考えています。

①、②の結果から、FCSRTをピックアップしてみた場合にFree Callは「新しいことを覚える、慣れる」を数値化したものと考えるならば、臨床上、高齢者で聴力と認知機能が低下することは予後予測として、

・「新しい環境への適応に難渋する可能性」

・「現在の生活リズムが崩れる可能性、活動性の低下」

から、社会参加の阻害に関与するかもしれません。

その対策として、

・「現在の生活ルーティンの維持」

聴覚機能自体には

・「書字など、聴覚の代償」

・「補聴器の使用」

といった生活の時間の流れ、コミュニケーションの手段の獲得においても介入の余地があると考えられます。

 

以上です。

気になる箇所等ありましたら適宜修正して行きたいと思います。

引き続きご意見等、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。