PTいっつんのEBMブログ

理学療法士兼ひよっこEBMerがお届けする文献抄読

非ベンゾジアゼピン系の服用は転倒リスクを増やすか?

今回のお題は

 

「非ベンゾジアゼピン系(z-drug)の服用は転倒リスクを増やすか?」

訪問して下さりありがとうございます。 

 

高齢者の中には眠剤を服用している方で、特に自分が老健に勤めていた際に日中のフラツキや傾眠から、立位や歩行バランスを崩して転倒するケースを経験したことがありました。今回はその転倒の予測のいち判断として、文献を読んでいきたいと思います。

 

「Use of non-benzodiazepine sedative hypnotics and risk of falls in older men」

URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4289612/

PMID:25587493

前向きコホート研究

 

PECO

P:71歳以上の地域高齢男性(4450人)

E:z-drugを使用すると(94人)

C:ベンゾジアゼピンを使用した場合(177人)or睡眠剤を使用しない場合

O:転倒率は増加するのか

 

※1次アウトカムは明確か→明確

 

 

【方法】

 項目:転倒についてのアンケート(4ヶ月ごとにアンケートを送付、何回転倒したのかを1,2,3,4回もしくは5回以上で回答)

その他15項目(IADLの実行の可否、歩行速度、MMSE、GDSなど)を計測。

 

 

【結果】(ResultとConclusuionをまとめて)

 

z-drugのベースライン特性(年齢調整されたモデル) ()内は95%信頼区間

・転倒(RR1.44)、再転倒(RR1.51)

・GDSはz-drugと転倒リスクとの相関(RR1.30)あり

 

z-drug vs ベンゾジアゼピン

・多変量モデル(年齢、GDSスコア、BMIなど12種類)では、ベンゾジアゼピンは転倒、再転倒リスクと中等度の上昇と関連(転倒:RR1.37 再転倒:RR1.44)

※z-drugには年齢調整モデルにおける転倒歴については有意な相互作用があった(P=0.01)

・再転倒については有意でなかった(P=0.24)→潜在的な交絡因子によって有意差が弱められた影響あり

 

z-drug vs 睡眠剤非使用者

・年齢調整モデルではz-drug使用群は(転倒:RR1.40、再転倒:1.35)とリスク増加と関連

ベンゾジアゼピン使用者と転倒の経過との間に相互作用の根拠なし(非転倒者:P=0.41 転倒者P=0.70)

 

【まとめ】

ベンゾジアゼピン使用者は日常生活の障害の増大、身体機能の低下、うつ症状のレベル上昇に関連している

・65歳以上の患者のRCT、ゾルピデム使用者で有意に大腿骨頸部骨折が増加(REFERENCES 9参照)

・65歳以上の後向きコホート研究では、ゾルピデム処方後90日で非椎体骨折、転倒のリスクが高い(REFERENCES 10参照)

・鎮静催眠剤の追加のリスクは既に転倒している人は無視できるレベルだが、前に転倒しなかった人にとっては転倒するリスクが増加する場合がある。

 

【感想】

今回のケースでは恐らくコホート研究では避けられなかった交絡因子の存在によって、z-drugとベンゾジアゼピンの再転倒の有意差は見受けられなかったとなってしまったため、再検討する必要があると考えられる。

Conlusionにも記載があったが、ベンゾジアゼピン使用者は認知機能や身体機能の低下、うつ状態の悪化といった心身の状態悪化から転倒へ到るケースが多いが、z-drugについてはこの文献からは、睡眠障害を起因として転倒へ到るケースが多い印象があるとのこと。

 

認知機能の低下やうつ状態の悪化、身体機能の低下など、心身の状態変化においても転倒リスクを評価し、特に予後を予測し、時々に合わせた環境設定はもとより、日常生活場面での練習(予後を予測した杖歩行の練習など)を行ったり、ご家族ないしは施設であれば担当している職員に見守りしてもらうといった、マンパワーが必要な場合の指導を行っていく必要があると感じた。

 

そのため、主に睡眠障害のある方に対し、ご本人やご家族に対し日中や夜間の身体のふらつきや覚醒の状態を確認していく必要がある。転倒しないために、必要に応じて、環境設定(歩く際に手で掴まれるように動線上にテーブルや手摺を設置するなど)を施行していったり、転倒リスクのある絨毯や段差の撤去など、またはご本人やご家族に転倒しやすい箇所について注意を促したり、リハビリで転倒しないように訓練を行う必要がある。また、睡眠障害に対して、服薬以外での対策の検討も提案できれば転倒リスクは減るのではないかな…と。(医師や薬剤師、他職種との連携がカギとなってきそうな気はします)

 

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引き続き、宜しくお願いします。