ベンゾジアゼピンと非ベンゾジアゼピンの服用は大腿骨頸部骨折のリスクを増やすか?
訪問して下さりありがとうございます。
前々回に掲載したお題に関連して、今回は高齢者で増加する大腿骨頸部骨折について、ブログを書いていこうと思います。
「Benzodiazepines, Z-drugs and the risk of hip fracture: A systematic review and meta-analysis」
URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5407557/
PMID: 28448593
システマティックレビュー
メタ分析
【PECO】
P:50歳以上(平均65歳以上)
E:ベンゾジアゼピン系(BNZ)もしくは非ベンゾジアゼピン系(z-drug)の服用
C:眠剤を服用していない
O:大腿骨頸部骨折
※1次アウトカムは適切か→適切。
【方法】
・Medlineを用いて、PRISMAチェックリスト・フローチャートの基準に則り、RCT、ケースコントロール研究、もしくは骨粗鬆症性骨折関連の骨折で70%以上が大腿骨頸部骨折の文献を抽出し、中でもBNZとz-drugと非服用者の比較を行っているものを選定。
・ニューオタワスケールでGoodの文献を抽出。
・使用期間ごとに、短期(14日以内)、中期(14-30日以内)、長期(1ヶ月以上)に分類。
【結果】
BNZ vs 非服用
全体: (RR = 1.52, 95% CI 1.37–1.68, P<0.001, I2 = 67%)
短期:(RR = 2.40, 95% CI 1.88–3.05, P<0.001, I2 = 27%)
中期: (RR = 1.53, 95% CI 1.22–1.92, P<0.001, I2 = 0%)
長期:(RR = 1.52, 95% CI 1.35–1.71, P<0.001, I2 = 59%)
全体(不眠患者のみ):(RR = 1.00% CI 0.83–1.21, P=1.00, I2 不明)
z-drug vs 非服用
全体(RR = 1.80, 95%CI 1.60–2.02, P = 0.001, I2 = 0%)
短期:(RR = 2.39, 95% CI 1.74–3.29, P<0.001, I2 = 26%)
全体(不眠患者のみ):(RR = 1.90, 95% CI 1.68–2.13, P<0.001, I2 = 26%)
BNZについてはn数の少なさからか、95%CIの幅が大きい文献が散見される。
逆に期間を問わない文献では2004年以降は1つを除き、95%CIが1を超えており、高齢者での服用に伴って、大腿骨頸部骨折の罹患も増えているのではないかと考えらえる。
BNZ、z-drugともに短期使用者の大腿骨頸部骨折の罹患リスクは他期間よりも高い結果が出ている。
【感想】
前回に書いたテーマとほぼ同じ、短期使用での転倒リスクが高いといった結果であり、初めて処方される患者には転倒リスクについても説明する、或いは自宅内での転倒歴についても確認する必要があると考えられる。また、75歳以上では特に、上記薬剤の使用の有無に関わらず、転倒に伴った大腿骨頸部骨折のリスクが増加するため、更に注意が必要かと思われる。PTとしては1日の活動範囲やフラツキについて評価を行い、転倒しやすい箇所に対して、手摺などの設置や障害物の撤去といった環境設定、ご本人・ご家族への動作指導を行う必要がある。その他、眠れない原因を評価し、極力は眠剤を使用せずとも生活が行えるようにアプローチを行っていくことも念頭に入れていければと思う。また、眠気に伴い、運動量の低下による廃用防止のために規則正しい生活リズムをつけていくことも指導していき、ADL低下を防ぐことも考慮していきたい。