口腔ケアを集中的に行うことは肺炎予防に有効か?
今回は高齢者の誤嚥に関連し、口腔ケアについての文献をみていきたいと思います。
「Oral Care Reduces pneumonia in Older Patients in Nersing Homes」
URL: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11943036
PMID: 11943036
ランダム化比較試験(単盲検法)
【PECO】
P:470人の本邦施設入居者(11施設)
E:週に1度の歯科医や歯科衛生士の介入があった場合
C:歯科医や歯科衛生士の介入がない場合
O:肺炎発症率
※1次アウトカムは適切か→適切。
ITT解析はされているか→されていない。(ADL、認知機能、年齢の群間の割付は均等と考えられる)
【方法】
1996年から2年にわたり、介入。介入、非介入は各施設の看護師がランダムに選出。介入群は毎食後に看護師や介護士が介入して5分ほどの歯磨きの介入(効果が得られない場合はポピドンヨード1%希釈でうがいを実施)、週に1回の歯科医や歯科衛生士が介入、プラークや歯石の管理を実施。非実施群は1日に1回程度か不定期に歯磨きを実施(介助なく歯磨き可能)。また、ADL評価はBarthel Indexを使用、認知機能はMMSEで評価を実施。
【結果】
366人介入
脱落率:12.5%(介入群:14人、非介入群:30人)
熱発: (RR = 2.45, 95% CI 1.77–3.40, P<0.1)
肺炎発症率:(RR = 2.45, 95% CI 1.77–3.60, P<0.5)
死亡率: (RR = 2.40, 95% CI 1.54–3.74, P<0.1)
【感想】
単盲検法ということであり、バイアスはかかる可能性は否定できないと推測されます。また、死亡率もみていくのであれば、RCTで比較するのに関しては倫理的にどうなのかなと思うところもあるため、後ろ向きのコホート研究でもよかったのではないかなと少し問題視してます。結果的には集中的な口腔ケアを行っている方が肺炎予防に効果的であるため、歯石や歯垢除去がいかに肺炎予防の効果が高いかが言えるかと思います。しかしながら、ポピドンヨードの使用に関して、口腔粘膜へのダメージも示唆されており、それについては改めて調べていきたいところではあります。
以前にJJCLIPの配信でもあった、認知症患者の眠剤服用で肺炎になりやすいのか
という会がありましたが、食事の際の誤嚥、睡眠時の不顕性誤嚥のリスクを考えますと、口腔内のウィルスが気道に入り込むリスクを減らすよう、歯科依頼の提案や歯磨きについても確認をしてみてもいいのではないでしょうか。また、リハビリ的な側面ですと、ブラッシングでの上肢操作と口唇や顎の動きが協調的か評価したり、ブラッシングの際の立位や座位姿勢、ベッド上生活をされている方に対しての開口や頭頸部の可動域についてもみていく必要があります。
今一度、口腔ケアについても各人で見直しを行ってみてはいかがでしょうか。