PTいっつんのEBMブログ

理学療法士兼ひよっこEBMerがお届けする文献抄読

腰痛にプラセボは効果があるのでしょうか?(理学療法士の目線から)

訪問して下さりありがとうございます。 

 

体幹インナーマッスルに続き、腰痛についてです。

面白い文献を薬剤師のニンジャ先生

screamtheyellow.hatenablog.com

よりお教え頂きましたので、読んで参りたいと思います。

 

 

また、今回の題材はJJCLIPの第9回の放送でもありました、[症例35:腰痛にプラセボは効果があるのでしょうか?] 

pharmasahiro.hatenablog.com

 (クスリのよろず屋「雅 (Miyabi)」の見立て より引用)でも題材となったものです。それをPT目線で見ていきたいと思います。

「Open-label placebo treatment in chronic low back pain: a randomized controlled trial.」

URL:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5113234/pdf/jop1-157-2766.pdf

PMID: 27755279

ランダム化比較対象試験(無盲検法) 

 

PECO

P:3か月以上の非特異的な慢性腰痛を持ち、薬を服用している患者 97人(脱落 14人)

E:プラセボの錠剤を併用した場合(OLP群)→ 41人

C:通常の薬を飲んでいる場合(TAU群)→42人

O:腰痛に変化がみられるか

 

※1次アウトカムは適切か→疼痛については一時点だけでなく、詳細な評価がなされていると考えられる。RDQスコアを用いて障害の程度まで評価を行っているため、腰痛からの影響についても評価を行えていると考えらえる。

 

ITT解析されているか→されていない

 

【方法】

3週間、通常飲んでいる薬を飲む際にOLP群はプラセボ錠を飲む。評価はNRSとRDQスコアを用いて介入前、11日後、21日後に実施。NRSは痛みが弱いとき、中程度、最大の痛み、痛み全体(複合)をそれぞれ評価。

 

【結果】(変化がみられたものを記載)

NRS(複合): OLP群 1.49(SD1.68)  TAU群 0.24:(SD1.61) P値<0.001

RDQ:OLP群 2.86(SD3.91)TAU群 0.02(SD3.73) P値<0.001

 

【感想】

プラセボプラセボだと分かっていても効果があるんですね…。すごい…。子供だましという訳ではありませんが、例えば、腰痛に悩まされている方に対して、ご本人やご家族へ説明した上で、信頼関係に障害が出ないように行ってもいいのではないかと思います。(自分はそこまでのリスクを背負ってまではやらないですね…。)

 

今回の研究のNRSの取り方は痛みに波がある場合に、調査の際だけでなく、それ以外での場面の痛みについても検査が行えるメリットがあるなと感じました。また、痛みはVASやNRSといった主観的な検査が多いですが、リハビリの場面だと、例えば関節の可動域や筋力、日常生活がどれだけ自立できているかといったFIMなど、痛みによって影響される因子についても客観的に検査、評価を行いアプローチを行っていきます。今回の研究をリハビリで実施して、客観的評価が行えるとどうなるか、気になるところではあります。

 

自分は臨床場面では、患者さんから、どんな時(どんな動作、疲労の度合い、時間帯など)に痛みが出るのかについて、日常生活のどういったことが一番困っているか、お話を伺うようにしてます。そうすることで、患者さんの痛みを共有でき、他の職種と情報共有を行う、コミュニケーションのきっかけにもなります。また、経時的に患者さんの様子を伺い、話の中で痛みの変化があれば、最初とどう違うのか、気づいたことをお伝えすることも患者さんの不安感の軽減にも繋がり、次の対策についても考えられます。

 

その他、臨床で工夫されていること、疑問に思うことがありましたら、コメントやtwitterでお話できると幸いです。

BCAAの摂取はダイエットに効果があるのか?

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筋トレをする際に、プロテインはもとより、その他アミノ酸系、ブースター系、回復系など様々なサプリメントがあります。その中でもBCAAの効果についての文献を見つけましたので、紹介致します。

 

「In a single-blind, matched group design: branched-chain amino acid supplementation and resistance training maintains lean body mass during a caloric restricted diet

https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-015-0112-9

PMID: 26733764

ランダム化比較対象試験(単盲検法)

 

PECO

P:レジスタンストレーニングを行っている21-28歳の男性(17人)

E:食事制限中にBCAAをトレーニング前(または最中)と後に摂取した場合(BCAA群)

C:  食事制限中に糖質サプリメントをトレーニング前(または最中)と後に摂取した場合(CHO群)

O:  除脂肪体重に変化があるか

 

※1次アウトカムが明確か→除脂肪体重以外にも、体重や筋量といった具体的な増加が予想される項目についての検査も実施しており、明確と思われる。

ITT解析されているか→されていない

n数が17と少なく、信憑性が低い可能性がある。

 

【方法】

検査は体組成計を用いて、体重、体脂肪量、除脂質体重、休憩代謝量(RMR)はTrue One®を用いて計測。筋力は1RMのベンチプレス、スクワットの重量を計測。筋持久力は1RMの80%でベンチプレス、スクワットをできるだけ多く行うよう指示し、回数を計測。

介入は8週間、4回/週(4分割)でレジスタンストレーニングを実施。指示された方法で制限食を摂取(Table1 参照)、BCAA群、CHO群ともにそれぞれトレーニング前(または最中)と後で各14gずつ摂取。

 

【結果】(数値はp<0.05)

 ・体重について

BCAA群:脂質量の有意な減少(-0.05±0.08kg)がみられている。

CHO群:有意な減少がみられており(-2.3±0.7kg)、除脂肪体重の有意な減少(-0.9±0.06kg)がみられている。

・筋力について

両群ともに全身筋力の有意な変化あり。

BCAA群:全身筋力(15.1±2.2kg)、上半身(7.1kg±1.6kg)

CHO群:全身筋力(-3.7kg±2.3kg)、上半身(-3.7kg±2.3kg)

・筋持久力について

スクワットにおいてはCHO群で有意な変化(5.3±0.2回)あり。

ベンチプレスは両群とも介入前と変化なし。

・RMRについて

BCAA群:有意な減少(-412±67kcal/day)がみられている。

CHO群 介入前と変化なし。

 

【感想】

研究自体はn数が17と少なく、単盲検法であり、信憑性の低さは否めません。しかし、研究の方法についてはプロトコルに則り、定量的な方法がとられていることから、デザインとしては偏りの少ない方法ではないでしょうか。個人的にはシェイプアップを目指す方はトライしてみる価値はあると考えられます。

 

研究結果をみる限り、BCAAを食事制限中に摂取することで、脂肪を落としつつ、筋量を向上させることが出来るようです。メリハリのある体型を求める場合に向いていると考えられます。その代わりに代謝が低下することによる脂質増加のリスクはあるため、筋トレの負荷量は維持するか上げていく、必要に応じて運動の回数を増やす必要があると考えられます。逆に、体重を落とす場合(格闘技などの減量)については向いていないように思えます。

 

 

サプリメントを購入する際、メリットだけでなくデメリットについても検討し、自分の理想の体型や競技に沿ったものを検討していく必要があるのではないでしょうか。また、サプリメントはあくまでも食事で補えないものをさらに摂取をするためのものであり、減量する際は代謝量と摂取カロリーを比較し、食事からまんべんなく栄養を摂取することを最優先に考える必要があります。

筋トレをする際の監督者の割合で成果が違う?

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自分の趣味が筋トレであり、今回は筋トレについてと、リハビリでの集団体操に活かせそうな論文を見つけたので紹介していきたいと思います。

 

「Influence of supervision ratio on muscle adaptations to resistance training in nontrained subjects.」

https://www.researchgate.net/publication/26723844_Influence_of_Supervision_Ratio_on_Muscle_Adaptations_to_Resistance_Training_in_Nontrained_Subjects

PMID: 19661830

ランダム化比較対象試験

 

PECO

P:非トレーニング実施者200人(後に除外76名)

E:筋力トレーニングを監督:被験者の割合が1:5の場合(HS群)で実施

C:筋力トレーニングを監督:被験者の割合が1:25の場合(LS群)で実施

O:筋力の増加量は高くなるのか

 

※1次アウトカムか→1次アウトカム

ITT解析されているか→されていない(除外が多く、バイアスがかかる可能性あり?)

 被験者、監督ともにランダム化されている。

【方法】

18歳以上の健常かつ今までトレーニングをやったことがない男性を対象に実施。HS群、LS群ともに被験者は25名で1グループ、各群4グループで実施。 11週間にわたり、2回/週、メニューA,B,C(TABLE1参照)を繰り返し行っていく。各種目は8-12回実施。筋力については介入1週間前と11週介入後5-7日後にベンチプレスの1RMでの負荷量、バイオデックスを用いた膝伸展筋力を計測。

【結果】

ベンチプレス(単位:kg)

0週  HS群:56.6±10.94  LS群:60.87±14.18

11週 HS群:65.6±11.11(p<0.05 vs LS)  LS群:67.09±12.82(p<0.05 Vs 0週)

 

膝伸展筋力(単位:kg)

 0週  HS群:212.21±41.13  LS群:235.68±31.34

11週  HS群:236.96±38.91(p<0.05 vs LS)  LS群:238.46±38.62

 

ベンチプレスについては両群ともに有意な増加(LS:10.22%、HS:15.9%:p<0.05)を示した。

膝伸筋トルクについてはHS群で有意な増加(11.8%:p<0.05)を示した。

 

【感想】

解析の結果から、さらに「HS群の被験者の74.19%およびLS群の被験者の36.07%が、ベンチプレス運動において最大強度で訓練されたと推定された。脚部運動では、HSで17.74%、LSで9.68%が最大反復で訓練を受けた。」とされていました。しかしながら、除外者が多く、データの偏りがみられる可能性があるのではないでしょうか。また、被験者に対する監督の関わり方については明記されておらず、場合によっては被験者と監督との接触頻度や話し合われる内容によっても筋力に変化がもたらされるのではないかという疑問があります。逆にマンツーマンで行う場合など、被験者が5人よりも少ない場合についても気になるところではあります。

また、リハビリに関しては集団体操を行うこともしばしばあります。その際の人数配置によっては今回の研究同様に、上下肢の筋力向上ないし、ADLの能力向上にも貢献できる可能性があるのではないでしょうか。このあたりについては研究をしていく必要があると考えられます。

体幹のインナーマッスルの強化で非特異的腰痛は改善しない…?

 

訪問して下さりありがとうございます。

 

巷で「体幹インナーマッスルを鍛えてバランスよくする…、ダイエット…、姿勢改善…」という言葉をよく耳にするようになりました。臨床でも、負荷が腰部に局所的にかかって痛みが起こっている場合、体幹インナーマッスルを鍛え、その負荷を分散させて痛みをとろうとする治療方法を聞くことがあります。そこで今回は実際の臨床データからその効果のほどを見ていきたいと思います。

 

「Trunk muscle stabilization training plus general exercise versus general exercise only: randomized controlled trial of patients with recurrent low back pain.」

https://www.researchgate.net/publication/8000885_Trunk_Muscle_Stabilization_Training_Plus_General_Exercise_Versus_General_Exercise_Only_Randomized_Controlled_Trial_of_Patients_With_Recurrent_Low_Back_Pain

PMID:15733046

ランダム化比較対象試験 

 

PECO

P:亜急性期~慢性期の非特異的腰痛患者→126人(除外55 71人)

E:腹横筋+多裂筋の強化と通常の腰痛体操を8週実施→29人(インナーマッスル群)

C:通常の腰痛体操を8週実施→26人(通常群)

O:腰痛の程度、腰痛に伴った活動、不安感、痛みのコントロールに差が出るのか

 (Pの除外人数に誤りがあり、訂正いたしました。)

※1次アウトカムは明確か→検査項目が多いが、プライマリアウトカムは腰痛の程度ではあると思われ、それを裏付ける目的で様々な評価を実施しているため、明確であると考えられる。

ITT解析されているか→されている

 

【方法】

各群ともに、介入前、2か月後、5か月後に以下の検査を実施。(体操についてはAppendix参照)

SF-MPQ-2:痛みの質、強さ

VAS(介入前A 、2か月後B 、7か月後Cとしている):痛みの強さ

RMDQ:腰痛による活動制限について

TSK:腰痛に対する不安感

PSEQ:慢性腰痛に対する自己効力感

PLC:痛みに対するコントロールが自己または外部によるものかの知覚について

 

 

【結果】

通常群で介入前-2か月後RMDQが優位に改善するのみであった。

 

RMDQについて  ※()内は標準偏差

介入前     インナーマッスル群9.2(4.6) 通常群11.3(5.2)

2か月後   インナーマッスル群5.1(4.0) 通常群4.7 (3.5)

5か月後   インナーマッスル群4.5(3.8) 通常群5.2 (3.5)

P値 0.5 

 

【感想】

研究結果をみると、体幹インナーマッスルを鍛えても、通常の体幹の筋力訓練と大きな差がないようです。巷でインナーマッスルを推す声がある中で、かたやこういったデータが出たことは無視できないです。やはり、その治療法が果たして有効かについてしっかりと検討しないといけない、という警鐘を鳴らしているようにも感じました。当たり前ですが、自分がセラピストである以上、安易に体幹インナーマッスルに注視してはいけないなと改めて感じました。やはり、機能~社会参加までを包括的に評価を行い、機能改善のみならず、腰部へ負担をかけない動作の指導や姿勢など、患者さんひとりひとりへの生活へのアプローチを心掛けていく必要があるのではないでしょうか。引き続き、腰痛へのアプローチについての文献を読んでいき、またブログに綴りたいと思います。

 

現在、批判的吟味についても勉強中であるため、気になる点などございましたら、コメントやtwitterでリプライやDMを頂けると幸いです。どうぞ宜しくお願いします。

「就寝時に起こるももやふくらはぎの痙攣はストレッチで改善できるのか?」

初めまして。施設に勤務しております、理学療法士のいっつんと申します。

EBM初心者ですが、読んだ文献をブログに書いて皆様のお役に立てればと考えております。ご意見などございましたら、コメントを宜しくお願いします。

 

今回のお題は

 

「就寝時に起こるももやふくらはぎの痙攣はストレッチで改善できるのか?」

 

私自身、 こういった就寝時の相談をよく伺います。

同じように太ももやふくらはぎの痙攣でお困りの方ののヒントになれば幸いです。

 

「Stretching before sleep reduces the frequency and severity of nocturnal leg cramps in older adults: a randomised trial」

http://www.journalofphysiotherapy.com/article/S1836-9553(12)70068-1/pdf

PMID:22341378

ランダム化比較対象試験 

 

【PECO】

P:キニーネ使用者、睡眠治療患者、整形外科治療患者、重篤な疾患を有する患者、筋痙攣を伴った併存疾患を有する人をのぞく、就寝時に太ももやふくらはぎが痙攣する55歳以上の方→119人(のち除外39人)

E:6週間、就寝前にハムストリングスとふくらはぎのストレッチを行う→40人

C:ストレッチの方法を指導されていない55歳以上の男女→40人

O:太ももやふくらはぎの痙攣の回数や強さが改善するか

 

※1次アウトカムは明確か→回数、強さに対して直接的に患者自身で評価を行っており、明確と考えられる。

ITT解析されているか→されている

人数の割り当ても均等に行われている。

 

【方法】

介入群に対してセラピストがハムストリングスとふくらはぎのストレッチを指導(方法については本文献のFigure 1を参照してください)。6週間、就寝前にストレッチを実施し、翌日に就寝中の痙攣の頻度と10cmのVASを用いて痙攣の強度を記録。

 

【結果】()内は95%信頼区間

・痙攣の頻度(単位:回数)

0週 介入群:3.4(SD1.5) 非介入群:3.2(SD1.9)

6週 介入群:1.4(SD1.5) 非介入群:2.4(SD1.7)

→6週間の介入で非介入群よりも1.2回の軽減がみられている。

 

・痙攣の強さ(単位:cm)

0週 介入群:7.2(SD1.4) 非介入群:7.4(SD1.3)

6週 介入群:5.9(SD1.4) 非介入群:7.5(SD1.3)

→6週間の介入で非介入群よりも1.3cmの軽減がみられている。

 

【感想】

 痙攣の回数、強さともに微小ながらも改善が見込まれているようです。

ももやふくらはぎの痙攣には電解質の不足、下肢の血流量の低下や冷感など、様々な理由があるようですが、根本的な原因が未だ不明とされています。(解明されればノーベル賞レベルとのうわさも)

ひとつの提案として、ご本人やご家族に、夜間の太ももやふくらはぎのストレッチを検討してみようと思います。また、リハビリのメニューにも組み込むことも検討していきたいと思います。